リーガルテックについて執筆を行っているJack Shepherd氏のブログから契約書ドラフト作成のChatGPTの活用例についてご紹介します。
同氏のブログでは以下のようにChatGPTを契約書ドラフトの作成に適応する場面について説明がされています。
ChatGPTはOpen AI社によって2022年の終わりに登場しました。
これはとても印象的なツールで、ユーザは質問をすることでChatGPTを操作でき、我々が驚くような結果を得ることができます。
ChatGPTでできることは数多いですが、例えば契約書を作成できます。
「雇用契約書を作成してください」といったプロンプトを使用すると、説得力のある雇用契約書が生成されます。
これにより、弁護士は契約書ひな形を見つけるのに苦労している場合に時間を節約できるかもしれません。
ChatGPTには多くのユースケースがあり、契約書作成以外には、法的助言メモ、訴状および法廷文書の作成、要約などがあります。
しかし、ChatGPTが出力の法的影響を実際には理解していないため、出力が疑わしいことがよくあり、またすべての文脈を理解していません。
例えば、準拠法が何であるべきかを尋ねることはありません。
ChatGPTは書類の最初のドラフトを作成することが今のところの主なユースケースであるという意見があります。
しかし、私はまだChatGPTをこのように使用することに2つの問題を抱えています。
まず、私自身が契約を見直すときには、その契約がなぜそのように作成されたのかを知りたいです。
なぜ雇用契約書にガーデニングリーブに関する条項があるのですか?
これが特定の方法で作成されたのはなぜですか?
ここで取り上げるべきものは何でしょうか?
二つ目に、ひな形に基づいて契約書をレビューする際、何が変更されたかがわかります。
これにより、レビューを特定の箇所に集中させることができます。
定型的な部分はすばやくスキップし、問いただす必要があることがわかっている条項に集中することができます。
テンプレートではなく、例としての文書をもとに作業している場合でも、これを行うことができます。
それを作成した人と話し、どの部分が厳しく交渉されたか、そうでなかったかを把握することができます。
ブラックボックスに基づく出力では、何に焦点を当てるべきか全く分からず、悩ましいです。
なぜなら、ページ上のあらゆる言葉に100%の精査を適用する必要があるからです。
長い法的文書ではレビューに悪影響を及ぼし、何かを見落とすのではないかと心配になるでしょう。
契約書の作成にChatGPTが人々に魅力的に映る理由がわかります。
しかし、自動的に契約書を作成するまでにはまだ非常に長い道のりがあります。
個人的には、最初のドラフトを生成することにも不安を感じます。
ほとんどの弁護士は、これまでに作成されたことがない契約書を作成しているわけではありませんし、私は事務所が承認したひな形を使用するか、それができない場合は例文を使用する方が良いと考えます。
少なくとも、これらの場合は誰かによって精査されており、その出所と文脈についての情報を持っています。
これらの要素がなければ、適切にクライアントに助言することや、彼らにとって最良の結果を得ることができると感じるのが難しくなります。
ChatGPTで生成する文章が本当に良いものなのかどうかを判断することは重要です。
契約書以外でも、例えば自社製品のプレスリリースをChatGPTで生成させる企業は増えてきていますが、本当にプレスリリースとして質が高いのかどうかはChatGPTは担保してくれません(それっぽい文章を生成することが得意なのは周知のとおりです)。
もちろん契約書作成においても制限は想定され、具体的には準拠法に影響される場面は大きいです。
例えば、日本で活用される契約書ではガーデニングリーブ(退社まで従業員になにも仕事をさせないこと、専門知識や技術の陳腐化のため)条項は一般的に存在しません。
ChatGPTでドラフトを作成させる場合であっても、自社ビジネスの背景などはしっかりとプロンプトに練り込み、可能な限り生成した文章を評価できる専門家(この場合は弁護士)に依頼することが推奨されます。
少なくとも現状における素のChatGPTは、企業ビジネスの背景や取り引きの背景などの外部知識の活用は苦手ですが、Retriever Augumented Generationなどで付加情報をサポートする形で契約書ドラフト作成に特化させると、一つのビジネスチャンスになる可能性は大いにあります。
https://jackwshepherd.medium.com/chat-gpt-for-contract-drafting-ai-v-templates-50ec8fd42f44