金融タスク向けに最適化された言語モデルへのアクセスを簡単にするAIであるFinGPTが、コロンビア大学およびニューヨーク大学(上海)の研究チームによって公開されました。
専用のモデルであるBloombergGPTは独占的な金融データへのアクセスを利用できる一方で、トレーニング費用が500万ドルと高価で柔軟性に欠けるとされています。
その一方で、FinGPTは事前に学習された言語モデルと効率的な低ランク適応(LoRA)法を使用した微調整を用いています。
LoRA法を使用することで、訓練可能なパラメータの数を617億から367万に減らすことができ、微調整プロセスがより迅速で計算量が少なくなり、金融テキストを効率的に理解および生成できるようになると主張しています。
FinGPTの応用についてはロボアドバイザー、量的取引、多様な要因に基づくポートフォリオ最適化、金融市場のセンチメント分析、リスク管理、詐欺検出、信用スコアリング、倒産や事業買収の予測、公開報告書やニュースに基づくESGプロファイル分析、ローコード開発、金融教育などがあるとしています
ライセンスについてはMIT licenseとなっているため、商用利用が可能となっています。
BloombergGPTが公開されていないモデルということもあり、金融LLMの自社活用を検討していきたいプレイヤーには嬉しいリリースです。
例えば信用スコアリングなどでは、将来的にはデータと背景をプロンプトとしてLLMに入力するだけで予測モデルを作成してくれるようになってくるでしょう。
つまり、LLMのプロンプティングによってノーコードでの分析が可能となるため、既存のノーコードツール提供事業者はLLMとの厳しい競争にさらされる可能性があります。
構築したモデルの解釈においても、LLMは言語生成ができる面で人間にとって活用しやすいというアドバンテージがあり、とりわけ金融においては専門用語が数多く存在するため、金融に特化したLLMのニーズは大きいことが予想されます。
一方で、日本語の処理に満足に対応できるかであったり、金融に関連する準拠法が大きく異なっていることからも、日本におけるビジネスへの適応可能性については調査が必要です。
ただし、元記事の主張にもあるようにパラメータ削減によりファインチューニングが容易であることから日本語適応も行いやすいモデルであることが予想されます。